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コラム

花粉症は「なってから」より「なる前」に

いつも佐野クリニックのコラムをご覧いただきありがとうございます。

今回は、もはや「国民病」となった花粉症についてのお話です。

日本の春の風物詩といえば桜ですが、それよりも先にやってくる「スギ花粉」に頭を悩ませている方は多いのではないでしょうか。

現在、日本人の約3〜4割が花粉症を抱えていると言われ、もはや国民病といっても過言ではありません。

「例年のことだから」と我慢したり、市販薬だけで済ませたりしていませんか?

花粉症は単なる鼻水・くしゃみの問題ではなく、集中力の低下や睡眠不足を招き、

仕事や勉強のパフォーマンス(QOL:生活の質)を著しく低下させる「疾患」です。

今回は、内科の視点から花粉症のメカニズム、風邪との見分け方、そして最新の治療戦略について詳しく解説します。

1. なぜ花粉症は起きるのか?「コップの理論」

私たちの体には、細菌やウイルスなどの異物から身を守る「免疫」という仕組みが備わっています。

花粉症は、本来は体に害のないはずの花粉に対して、この免疫システムが過剰に反応してしまうことで起こります。

よく例えられるのが「コップの理論」です。

人にはそれぞれ、アレルギー反応を引き起こすまでの許容量(コップ)があります。

毎年花粉を浴び続けることで、コップの中に少しずつ「IgE抗体」という物質が溜まっていきます。

そして、そのコップがついに溢れ出したとき、初めて花粉症の症状が発症するのです。

昨日まで平気だった人が、今日突然花粉症になるのはこのためです。

一度溢れ出したコップを空にするのは難しいため、いかに「溢れさせないか」「溢れる勢いを抑えるか」が治療の鍵となります。

2. 最も効果的な戦略「初期療法(予防内服)」とは?

花粉症の治療には、大きく分けて「初期療法」「維持療法」「頓服(とんぷく)療法」の3段階がありますが、最も重要なのが「初期療法」です。

▶ 初期療法とは

花粉が本格的に飛び始める前、あるいは症状がごく軽く出始めたタイミングから、あらかじめ内服薬(主に抗ヒスタミン薬)などの

服用を開始する治療法のことです。

▶ なぜ「飛ぶ前」に飲むのか?

花粉が飛び始めて鼻の粘膜に付着すると、粘膜が炎症を起こして敏感になります。

一度炎症がひどくなってしまうと、薬を飲んでもなかなか症状が治まりません。

あらかじめ薬を服用しておくと、以下のメリットがあります。

 👉症状の発生を遅らせる: シーズンに入っても、発症する時期を遅らせることができます。

 👉症状のピークを低くする: 最も飛散量が多い時期の鼻水やくしゃみを、軽く抑えることができます。

 👉薬の使用量を減らせる: シーズンを通して、強い薬(ステロイドなど)を使わずに済む可能性が高まります。

 👉QOL(生活の質)の維持: 勉強や仕事の効率を落とさず、夜もぐっすり眠れるようになります。

3. 予防内服の医学的根拠:「感作」と「炎症」を抑える

なぜ予防的な内服がこれほどまでに有効なのか、もう少し詳しく医学的な背景を見てみましょう。

▶ 粘膜の「感作(かんさ)」を防ぐ

花粉を浴び続けると、鼻の粘膜の過敏性がどんどん増していきます。これを「感作」と呼びます。

初期療法によって、この過敏性の高まりをあらかじめブロックしておくことで、

シーズン中の「ちょっとした花粉」に対する過剰反応を抑えることができるのです。

▶ 炎症の連鎖を断ち切る

花粉症の症状は、化学伝達物質(ヒスタミンなど)が放出されることで起こりますが、

これが繰り返されると粘膜自体が腫れ、さらに症状が悪化するという「負のスパイラル」に陥ります。

予防的に内服を行うことは、このスパイラルが始まる前に、細胞の周りに「バリア」を張っておくようなものだと考えてください。

4. 予防内服はいつから始めるべき?

初期療法を開始する理想的なタイミングは、「花粉飛散予測日の約2週間前」、あるいは「鼻が少しムズムズしたかな?と感じた直後」です。

  スギ花粉の場合:

  地域にもよりますが、九州では例年2月末から3月上旬にかけて飛散が始まります。

  そのため、「2月中旬〜下旬」に内服を開始するのがベストです。

 「飛散開始日」の定義:

  1平方センチメートルあたり1個以上の花粉が2日連続で観測された初日が「飛散開始日」とされます。

  しかし、実際にはその前から微量の花粉は飛んでいます。敏感な方は、この「微量な時期」からの対策が功を奏します。

5. 内科で処方される「予防薬」の種類と特徴

市販薬も増えていますが、内科で処方される薬は種類が豊富で、患者様の体質や生活スタイルに細かく合わせることができます。

 💊 第2世代抗ヒスタミン薬(主流)

現在、最も一般的に使われる薬です。昔の薬に比べて「眠気」や「口の渇き」といった副作用が劇的に少なくなっています。

 特徴: 1日1回の服用で済むもの、食事の影響を受けないもの、効き目が速いものなど、バリエーションが豊富です。

 💊 抗ロイコトリエン薬

特に「鼻づまり」が強い方に有効な薬です。血管の腫れを抑える効果があり、夜間の鼻づまりで眠れない方によく処方されます。

 💊 鼻噴霧用ステロイド薬

最近は「内服+点鼻」の組み合わせが非常に効果的であることが分かっています。

ステロイドといっても鼻の粘膜という局所にしか作用しないため、全身への副作用の心配はほとんどありません。

6. 「薬を飲み続けるのが不安」という方へ

「症状がないのに毎日薬を飲むのは抵抗がある」という方もいらっしゃいます。

しかし、現代のアレルギー治療薬、特に第2世代抗ヒスタミン薬は、長期間服用しても依存性や大きな副作用が少ないことが確認されています。

むしろ、我慢して症状を悪化させ、鼻粘膜が慢性的な炎症状態になってしまう方が、体への負担や将来的な副鼻腔炎(蓄膿症)のリスクを高めてしまいます。

また、「舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)」という選択肢もあります。

これは数年かけて体を花粉に慣らしていく、いわば「根本治療」です。

ただし、この治療は花粉飛散時期には開始できません。来年の予防を本気で考えるなら、シーズンオフに相談を開始するのが賢明です。

7. 医師が教える「予防効果を最大化する」生活習慣

薬を飲むだけでなく、日々の生活で「体内に入れる花粉を減らす」努力を掛け合わせることで、予防内服の効果はさらに高まります。

 👉「モーニングアタック」を防ぐ:

   朝起きた瞬間に激しいくしゃみが出るのは、床に落ちた花粉を吸い込むため。寝室の加湿と、拭き掃除が有効です。

 👉帰宅時の「玄関払い」:

    衣服に付着した花粉を玄関の外で払うだけで、室内の花粉濃度は劇的に下がります。   

 👉アルコールを控える:

   飲酒は血管を拡張させ、鼻詰まりや粘膜の腫れを悪化させます。花粉の時期だけは、お酒を控えめにすることをお勧めします。

最後に:早めの受診が、春を変える。

「花粉症は付き合っていくしかないもの」と諦めないでください。

初期療法(予防内服)を適切に行えば、これまで毎年悩まされていた頭の重さや、集中力の低下、睡眠不足から解放され、

清々しい気持ちで春を迎えることができます。

当院では、患者様一人ひとりの「眠くなりたくない」「1日1回がいい」といったご要望に合わせて、最適な予防プランをご提案しています。

「まだ症状が出ていないから」と思わずに、ぜひ1月のうちに一度ご相談ください。早めの一歩が、あなたの今年の春を劇的に変えるはずです。

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