
コラム
「一生自分の足で歩くために」— 知っておきたい骨粗鬆症のこと
いつも佐野クリニックのコラムをご覧いただきありがとうございます。
「最近、背中が丸くなってきた気がする」「以前より身長が縮んだかもしれない」……。
そんな些細な変化を、「年のせいだから仕方ない」と片付けてしまっていませんか?
実はその裏には、「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」という静かな病気が隠れているかもしれません。
骨粗鬆症は、単に骨が弱くなるだけの病気ではなく、放っておくと生活の質(QOL)を大きく損なう恐れがあります。
今回は、いつまでも自分らしく、アクティブな毎日を過ごすために欠かせない「骨の健康」について、詳しく説明していきます。
1. 骨粗鬆症は「静かなる殺し屋」?
骨粗鬆症とは、骨の強度が低下して、骨折しやすくなる病気です。
この病気の最も厄介な点は、「骨がスカスカになっても、痛みなどの自覚症状がほとんどない」ということです。
多くの人は、つまずいて転んだ際に骨折し、病院に運ばれて初めて「自分が骨粗鬆症だった」と気づきます。
まさに「サイレント・ディジーズ(静かなる病気)」なのです。
特に、高齢者の方が骨折をきっかけに寝たきりになったり、介護が必要になったりするケースは少なくありません。
厚生労働省の調査でも、転倒・骨折は「要介護状態になる原因」の上位にランクインしています。
骨を健やかに保つことは、単に骨折を防ぐだけでなく、「一生自分の足で歩き続けること」に直結しているのです。
2. なぜ骨は「スカスカ」になってしまうのか
私たちの骨は、一度作られたら一生そのまま……というわけではありません。
実は、絶えず「古い骨を壊す(骨吸収)」と「新しい骨を作る(骨形成)」を繰り返しています。
これを、骨リモデリング(骨代謝)と呼びます。
健康な状態では、この「壊す」と「作る」のバランスが保たれており、約3〜5年で全身の骨が新しく入れ替わると言われています。
しかし、加齢や閉経、生活習慣の影響でバランスが崩れ、「壊す」スピードが「作る」スピードを上回ってしまうと、
骨密度が低下し、骨の中がスポンジのようにスカスカになってしまうのです。
特に女性は注意が必要です。女性ホルモン(エストロゲン)には、骨からカルシウムが溶け出すのを抑える働きがありますが、
閉経を境にこのホルモンが急激に減少するため、骨密度も一気に低下しやすくなります。
50代以降の女性の3人に1人は骨粗鬆症と言われるほど、身近な問題なのです。
3. 当院が採用する「DIP法」による骨密度検査
「自分は大丈夫かな?」と思ったら、まずは検査を受けることが第一歩です。
骨粗鬆症の検査にはいくつか種類がありますが、
当院では患者様への負担が少なく、精度の高い「DIP法(Digital Image Processing法)」を採用しています。
DIP法とはどんな検査?
DIP法は、左手のレントゲン写真を撮影することで骨密度を測定する方法です。
人差し指の付け根にある「第2中手骨」という骨を、アルミニウム製の厚さの階段(アルミステップ)と一緒に撮影し、
その画像の濃淡をコンピューターで解析して、骨の厚みや密度を数値化します。
DIP法のメリット
👉検査が非常にスピーディー: レントゲンを1枚撮るだけなので、検査自体は数分で終わります。お忙しい方でも気軽に受けていただけます。
👉被曝量が極めて少ない: 手の撮影のみであるため、胸部レントゲンなどと比較しても放射線量はごくわずかです。
👉痛みや苦痛がない: 装置の上に手を置くだけですので、痛みは一切ありません。
👉経過がわかりやすい: 解析データが数値化されるため、以前のデータと比較して治療の効果が出ているかを客観的に判断できます。
「大きな機械に入るのは怖い」「時間がかかるのは嫌だ」という方も、当院のDIP法なら安心して受診していただけます。
4. あなたは大丈夫? リスクチェックリス
加齢以外にも、骨粗鬆症のリスクを高める要因はいくつかあります。以下の項目に心当たりはありませんか?
▶性別・年齢: 50歳以上の女性、または70歳以上の男性
▶体格: 痩せ型(BMIが18.5未満)の方は、骨への負荷が少なく骨が弱くなりやすい
▶生活習慣: 喫煙習慣がある、お酒を毎日たくさん飲む
▶食事: カルシウム(乳製品、小魚)やビタミンD、ビタミンKの不足
▶運動: 日常的に歩く習慣がない、運動不足を感じている
▶持病・薬: ステロイド薬を長期服用している、糖尿病や慢性腎臓病がある
▶遺伝: ご家族(特に母親)に、足の付け根(大腿骨)を骨折した方がいる
もし1つでも当てはまる場合は、一度検査を受けて「今の自分の骨の状態」を把握しておくことを強くおすすめします。
5. 今日からできる! 骨を強くする「骨活」3つの柱
骨粗鬆症は、日々の生活習慣の見直しで予防・改善が可能です。ポイントは**「食事」「運動」「日光浴」**の3つです。
① 食事:カルシウムの「質」と「吸収」を考える
骨の材料といえばカルシウムですが、実はそれだけを摂っても効率よく骨にはなりません。
カルシウム: 牛乳、チーズ、小魚、豆腐、小松菜など。
ビタミンD: カルシウムの吸収を助ける「接着剤」の役割をします。鮭、メカジキ、干し椎茸などに豊富です。
ビタミンK: 骨にカルシウムを取り込むのを助けます。納豆やブロッコリーに多く含まれます。
タンパク質: 骨の約半分はコラーゲン(タンパク質の一種)でできています。肉や魚、卵もバランスよく摂りましょう。
② 運動:骨に「適度な負荷」をかける
骨は、重力や衝撃による負荷がかかることで「もっと強くならなきゃ!」と活性化します。
かかと落とし: まっすぐ立ち、かかとをグッと上げてからストンと落とす。これだけで骨に刺激がいきます(1日30回程度)。
片足立ち: 机や壁に手をついて、左右1分ずつ。バランス能力を鍛えて「転ばない体」を作ります。
ウォーキング: 1日15〜30分程度、太陽の光を浴びながら歩くのが理想です。
③ 日光浴:体内でビタミンDを作る
ビタミンDは食事からも摂れますが、実は日光(紫外線)を浴びることで皮膚でも合成されます。
夏なら木陰で15分、冬なら顔や手に30分〜1時間程度日光を浴びるのが目安です。
日焼けが気になる方は、手のひらを太陽に向けるだけでも効果があります。
6. 骨粗鬆症の治療 — 「諦めない」ことが大切
もし検査の結果、骨粗鬆症と診断されても、決して悲観することはありません。
現在は医療の進歩により、骨密度の低下を食い止め、骨折のリスクを劇的に下げるお薬がたくさんあります。
💊飲み薬: 骨が壊されるのを抑える薬や、骨の材料を補う薬など。週に1回や月に1回の服用で済むタイプもあり、負担が少なくなっています。
💊注射薬: 半年に1回の注射で済むものや、重症の方には積極的に骨を作る「自己注射」という選択肢もあります。
治療で最も大切なのは、「症状がないからといって、自己判断で薬をやめないこと」です。
骨の治療は数ヶ月で劇的に変わるものではありませんが、1年、2年とコツコツ続けることで、確実に「折れない骨」に近づいていきます。
骨粗鬆症の予防や治療に「遅すぎる」ということはありません。
80代から治療を始めて骨密度が改善し、元気に旅行を楽しんでいる患者様もたくさんいらっしゃいます。
背中が少し丸まってきたかな、最近運動不足だな……そんな小さな気づきを大切にしてください。
当院では、DIP法による迅速な検査と、お一人おひとりの生活スタイルに合わせた治療提案を行っております。
まずはご自身の骨の状態を「知る」ことから始めてみませんか? 不安なことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。


