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コラム

麻疹(はしか)の脅威と対策

いつも佐野クリニックのコラムをご覧いただきありがとうございます。

最近、国内外で麻疹(はしか)の流行がニュースなどで取り上げられる機会が増えています。

「昔の病気」というイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、麻疹は現在でも決して軽視できない、極めて感染力の強いウイルス性疾患です。

今回は、麻疹の正体、症状の経過、そして最も重要な予防策について、当院の視点から詳しく解説します。

1. 麻疹とは:驚異的な感染力のメカニズム

麻疹は、麻疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。その最大の特徴は、「空気感染」するという点にあります。

一般的な風邪やインフルエンザは「飛沫感染(咳やくしゃみのしぶき)」が主ですが、

麻疹ウイルスは飛沫が乾燥した後の微粒子(飛沫核)となって空気中を漂い、それを吸い込むだけで感染します。

そのため、同じ部屋にいるだけでなく、換気が不十分な空間であれば、すれ違っただけでも感染する可能性があります。

その感染力は、免疫を持っていない集団において、1人の患者から12〜18人に感染を広げると言われています。

これはインフルエンザの数倍から十倍近い強さです。

手洗いやマスクだけでは完全に防ぐことが難しく、「ワクチンによる免疫の獲得」が唯一にして最大の防御策となります。

2. 症状の経過:3つのステージ

麻疹の潜伏期間は約10〜12日間です。その後、以下の3段階を経て症状が進行します。

カタル期(3〜5日間)

38℃前後の発熱、咳、鼻水、結膜炎症状(目の充血や目やに)が現れます。

一見すると風邪と区別がつきませんが、この時期が最も周囲への感染力が強いのが特徴です。

また、この時期の終わりに、頬の粘膜に「コプリック斑」と呼ばれる白い斑点が出ることがあります。これは麻疹に特有のサインです。

発疹期(4〜5日間)

一度熱が少し下がった直後、再び39℃以上の高熱が出ると同時に、耳の後ろや首周りから赤い発疹が現れ、全身に広がります。

発疹は次第に融合して色が濃くなっていきます。

回復期

発熱が下がり始め、発疹も消失に向かいます。発疹の跡がしばらく色素沈着として残ることがありますが、徐々に消えていきます。

ただし、この時期は免疫力が著しく低下しているため、他の感染症(合併症)への注意が必要です。

3. なぜ麻疹は「怖い」のか:重篤な合併症

麻疹そのものも辛い病気ですが、真の恐ろしさは合併症にあります。

感染者の約30%が何らかの合併症を併発すると報告されています。

 👉肺炎: 麻疹による直接的な肺炎や、細菌の二次感染による肺炎。死因の多くを占めます。

 👉脳炎: 約1,000人に1人の割合で発生します。後遺症を残すことが多く、非常に危険です。

 👉亜急性硬化性全脳炎(SSPE): 麻疹に感染してから数年〜十数年後に、知能障害や運動障害が進行する難病です。

                  根本的な治療法はいまだ確立されていません。

大人が感染した場合、子供よりも重症化しやすく、入院が必要になるケースも少なくありません。

4. 予防の要:ワクチンの重要性

麻疹には特効薬がありません。

発症した場合は、熱を下げたり水分を補給したりする「対症療法」が中心となります。だからこそ、予防がすべてです。

現在、定期接種としてMR(麻疹風疹混合)ワクチンの2回接種が行われています。

1回の接種で約95%、2回の接種で約99%以上の人が免疫を獲得できるとされています。

【ご自身の接種歴を確認しましょう】

年代によっては、ワクチンの定期接種が「0回」または「1回」のみの世代があります。

特に昭和後期から平成初期生まれの方は注意が必要です。

母子手帳を確認し、記録がない場合や不明な場合は、抗体検査や追加接種を検討してください。

5. よくある質問(FAQ)

Q1. 子供の頃に一度かかった気がしますが、検査は必要ですか?

 A. 確実に麻疹に罹患した記録(診断書等)があれば生涯免疫が得られていますが、「はしかのような病気」だった可能性もあります。

   不安な場合は血液検査で抗体価を確認することをお勧めします。

Q2. 周囲で流行していると聞きました。今から打っても間に合いますか?

 A. 麻疹患者と接触してから72時間以内にワクチンを接種すれば、発症を予防できる可能性があります(緊急ワクチン接種)。

   まずは当院へお電話でご相談ください。

Q3. 卵アレルギーがありますが、接種できますか?

   A. 現在のワクチンは高度に精製されているため、重度の過敏症でなければ接種可能なケースがほとんどです。

       事前にご相談ください。

6. 受診時のお願い:感染を広げないために

もし、「発熱と発疹があり、麻疹かもしれない」と思われた場合は、直接クリニックに来院せず、必ず事前に電話でご連絡ください。

麻疹は空気感染するため、通常の待合室でお待ちいただくことはできません。

当院では、他の患者さんへの感染を防ぐため、別室での診察や、お車での待機をお願いするなどの特別な対応を行っております。

結びとして:地域全体の健康を守るために

麻疹は、個人の健康だけでなく、社会全体の免疫(集団免疫)によって流行を抑え込む病気です。

あなたがワクチンを打つことは、自分自身を守るだけでなく、

病気やアレルギーなどでワクチンを打てない小さな子供たちや妊婦さんを守ることにも繋がります。

気になる症状や予防接種に関するご不安があれば、いつでもお気軽に当院スタッフまでお尋ねください。


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