
コラム
インフルエンザ予防接種の重要性と正しい基礎知識
1. はじめに:なぜ「今」インフルエンザ予防接種が重要なのか
毎年秋口から冬にかけて流行を迎えるインフルエンザ。風邪の一種と思われがちですが、インフルエンザウイルスによる感染症は一般的な風邪とは異なり、38℃以上の急激な発熱、頭痛、全身の関節痛・筋肉痛、強い倦怠感など全身症状が急速に現れるのが大きな特徴です。
特に、高血圧や糖尿病などの生活習慣病をお持ちの方、神経疾患や膠原病で通院・治療中の方、消化器系に不安を抱える方にとって、インフルエンザの感染は持病(基礎疾患)の悪化や重症化のリスクを大きく高めます。当院(内科・神経内科・膠原病内科・胃腸内科)では、日常の疾患管理とともに、患者様の健康を守るための予防医療としてインフルエンザワクチンの接種を推奨しております。
2. 専門診療科の視点:持病がある方への影響と接種のメリット
当院で診療を行っている専門分野の観点から、インフルエンザ感染が体に与える影響と予防接種の意義について詳しく説明いたします。
【神経内科領域】パーキンソン病、脳卒中既往、神経筋疾患などをお持ちの方
パーキンソン病や脳卒中後の後遺症、神経筋疾患をお持ちの方は、インフルエンザによる高熱や全身倦怠感がきっかけとなり、一時的に運動機能や認知機能が低下(いわゆる離床率の低下やデコンディショニング)することがあります。また、嚥下(えんげ)機能が低下している場合、インフルエンザに続いて「誤嚥性肺炎」を併発する危険性が高まります。ワクチン接種により発症や重症化を防ぐことは、日頃の生活リズムや運動機能を維持するために非常に大切です。
【膠原病内科領域】関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)などをお持ちの方
関節リウマチや膠原病の治療では、ステロイド薬や免疫抑制薬、生物学的製剤を使用することが多く、一般の方に比べて感染症に対する抵抗力(免疫力)が低下しやすい傾向にあります。そのため、インフルエンザに感染すると重症化しやすく、原疾患(持病)の増悪を引き起こす場合もあります。免疫抑制療法を受けている患者様であっても、インフルエンザ不活化ワクチンは安全に接種可能です。「自分の病気や服薬内容でワクチンを打っても大丈夫か」と不安な方は、主治医に相談の上、適切なタイミングで接種を受けましょう。
【胃腸内科領域】潰瘍性大腸炎・クローン病などの慢性消化器疾患をお持ちの方
インフルエンザは呼吸器症状だけでなく、嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状を伴うことがあります。特に炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)で腸管免疫が不安定な方や、免疫調整薬を服用されている方は、感染を機に消化器症状が悪化するリスクがあります。全身状態の安定を保つためにも、事前のワクチン接種による予防が推奨されます。
3. インフルエンザワクチンの効果と「最適な接種時期」
インフルエンザワクチンは、感染を完全に100%防ぐものではありませんが、「発症する確率を下げる効果」と「万が一感染した場合の重症化・入院化を防ぐ効果」が科学的に証明されています。
効果が出るまでの期間と持続期間
ワクチンを接種してから体内で十分な抗体が作られるまでに約2週間かかります。その後、効果は約5ヶ月間持続します。
おすすめの接種時期:10月下旬~12月上旬
日本におけるインフルエンザの流行ピークは例年1月~2月頃です。そのため、抗体が十分に作られた状態でピーク期を迎えるには、10月下旬から12月上旬までに接種を完了させることが最も理想的です。
13歳以上・成人: 原則1回接種(1回の接種で十分な抗体が得られます)
65歳以上・基礎疾患をお持ちの方: 重症化予防効果が高いため、毎年欠かさずの接種が推奨されます。
12歳以下の子ども: 2回接種(2~4週間隔)
4. 予防接種を受ける際の注意点と副反応について
接種当日の注意点
☞体調管理: 朝から体温を測り、37.5℃以上の発熱がある場合や著しい体調不良がある場合は接種を受けられません。
☞服装: 肩に近い上腕部に注射するため、肩をスムーズに出せる服装でお越しください。
よくある副反応と対処法
インフルエンザワクチンは安全性の高いワクチンですが、以下のような一時的な副反応が起こることがあります。
●局所症状(注射した部位): 赤み、はれ、痛み、熱感(2~3日で自然に治まります)
●全身症状: 微熱、頭痛、寒気、だるさ(1~2日で改善することが多いです)
接種当日は激しい運動や過度の飲酒を避け、入浴の際は注射部位を強くこすらないようにしてください。当院で接種後に体調の変化や気になる症状が生じた場合は、すぐにご相談いただける体制を整えております。
5. ワクチンと合わせて行いたい日頃の感染予防策
予防接種に加え、日常生活の中でウイルスを「持ち込まない・広げない」対策を組み合わせることで、予防効果はさらに高まります。
こまめな手洗いと手指消毒: 外出先から帰宅した際や食事の前には、石けんと流れる水で丁寧に手を洗いましょう。
適切な湿度管理(50~60%): 空気が乾燥すると気道粘膜の防御機能が低下します。加湿器などを活用し、室内環境を整えましょう。
バランスの良い食事と十分な睡眠: 免疫力の基礎を作るのは毎日の生活習慣です。体を温め、休養をしっかり取りましょう。
人混みでのマスク着用と換気: 流行期には状況に応じてマスクを着用し、室内の定期的な換気を心がけましょう。
当院でのインフルエンザ予防接種のご案内
当院では、一般の患者様はもちろん、内科系疾患・神経疾患・膠原病・胃腸疾患で通院中の患者様が安心して予防接種を受けられるよう、お一人おひとりの体調に配慮した診療を行っております。
「今年の接種タイミングを相談したい」「持病の薬との兼ね合いが心配」など、ご不明な点がございましたらお気軽にスタッフ・医師にお声がけください。


